今まで金融緩和政策を継続していた日銀がとうとう利上げを行いました。この利上げによって生活にどこまで影響が及ぶかを心配している人も大勢いると思います。特に住宅ローンに対する懸念が大きいでしょう。この記事ではそのあたりを整理します。
そもそも利上げってなに?
皆さんは「インフレ」「デフレ」という言葉は何度もニュースで聞いていると思います。これらは経済現象を表す経済用語です。
- インフレ(インフレーション):物に対する貨幣の価値が下がり、物価が上昇している状態
- デフレ(デフレーション):物に対する貨幣の価値が上がり、物価が下がっている状態
そしてこれらは需要と供給のバランスが崩れている状態です。つまり
(インフレ)
お金をどんどん使ってやるぜ!前から欲しかったロードバイクを購入するぞ。
え?皆がロードバイクを欲しがったから値上げした?な、なんだって~(需要>供給)
お金があまりないから節約しないと。前から欲しかったロードバイクは諦めよう。。。
え?あまりにも売れないから値下げした?ど、どうしよう~(需要<供給)
といった状況です。インフレとデフレは一長一短であり、バランスを取るのが大事です。今の日本はデフレに偏り過ぎている(というよりデフレから全く動いていない)ので、インフレに何とか向かおうと四苦八苦しているところです。
このインフレ・デフレは様々な要因によって起こりますが、その一つが中央銀行(各国に一つある金融システムの中核)による金融政策です。
インフレとは皆がお金を持っている、言い換えれば市場にお金が出回るように状態と言えます。つまり銀行からお金を借りやすくする(利子を低く設定する = 利下げ)状態にすれば自然とインフレ状態に向かいます(基本的には)。
逆に銀行からお金を借りにくくする(利子を高く設定する = 利上げ)状態にすれば市場にお金が出回らず、デフレ状態に向かいます(基本的には、2回目)。
この利子に介入しているのが日本の中央銀行、日銀です。
今回日銀はこの金利の変動幅を今まで0.25%を上限と抑えていたのを、0.5%まで引き上げました。格銀行はこぞって金利を引き上げるでしょう。
利上げによる影響は?
真っ先に影響を受けるのは企業です。金利上昇に伴い新規の借り入れがし難く、また支払利息が増えるので業績が落ち、株価が下がると言われています。上記の通り、借り入れしないということは市場へのお金の流動性が下がり、物価が下がると言われています(基本的には、3回目)。
では個人はどうでしょうか。個人も同様に借り入れのハードルが上がり、支払い利息が増えます。つまり住宅ローンの金利が上がるということです。ただしここで勘違いしてはいけないのは、利上げしたのは長期金利であることです。
長期金利(長期プライムレート)とは名前の通り長期間(一年以上)のお金を貸し出す際の金利を指します。そのため「経済状況の今後の予測」が判断基準になります。つまり、今後景気が上がってインフレの可能性があるなと判断されたら利上げし、不景気でデフレが起こるなと判断されたら利下げします。
この長期金利と連動するのが住宅ローンの固定金利となります。
長期金利の対となすものが短期金利(短期プライムレート)です。一年未満(数日から数か月間)のお金を貸し出す際の金利です。こちらは「現在の経済状況の実態」が判断基準になります。つまり、今好景気だねと判断されたら利上げし、今不景気と判断されたら利下げされます。
この短期金利と連動するのが変動金利となります。
つまり、今回影響を受ける住宅ローンは固定金利なんだね。
嘘の情報に惑わされるな
yahooニュースを見ていて、有名な某経済ジャーナリストのコメントを見て愕然としました。
今回の利上げで変動金利も上がります。繰り上げ返済を検討しましょう!
オイ!
「今回の利上げをきっかけに金融政策が変わる可能性がある」や「黒田総裁の任期が終わる2023年4月は要注意」という警告なら正論ですが、今回の件で変動金利の繰り上げ返済を行うのはかなりの早計です。
銀行員の方にも聞きましたが、2023年1月に固定金利は間違いなく変わり、変動金利は九分九厘変わらないとのことでした(勿論予想ですのであしからず)。
適切とは思えない評論をニュースで語り、混乱を招くのは言語道断だと思います。正しい知識を得て、正しい解釈をし、自分の考えで対応できるようにしましょう。
番外編:何故金利を今上げたのか
ここからは私の予想が含まれますので、ご承知おきください。
上述の通り、好景気で過剰なインフレが予想される or 起きた際に利上げは通常行われます。では、今日本は好景気でしょうか?答えはNoです。
上の記事では何度も「基本的には」とかっこ書きしていますが、今回の利上げは特別だと考えています。
今回の利上げはインフレを抑制するものではありません。各国で利上げしているにも関わらず日本は利上げを行わないため、金利格差が増大し、市場に歪みが発生しました。目に見えてわかりやすいのは異常な円安ですね。これらを是正するために利上げをしたと黒田総裁はコメントしました。今回の利上げの影響で円高に動いたのは成果と言えます。
そもそも黒田総裁は利上げを元々したかったと思います。今の金利では顧客を増やしても銀行の儲けにならず、特に地方銀行は疲弊していくだけです。しかし日本の不景気を是正するために金融緩和政策を進めてきました(この金融緩和政策の内容が正しかったのかは論点がずれるのでこの記事では書きません)。
このように日銀は出来ることをやってきたと思います。しかし景気が一向に良くならないのは購買意欲を底上げしようと働きかけることを十分にしてこなかった政治家の怠慢だと私は思います。黒田総裁がしびれを切らしたという状況かなぁと。また、米国(FRB)の利上げ幅が0.75%から0.5%に縮小した時期であり、市場の混乱を軽減できるタイミングであったことも一因だと思います。
次期日銀総裁の政策によっては短期プライムレートの介入も十分にあり得ます。2023年4月が大きな分岐点になると予想しています。日本の政治家同様に、注視していきましょう(笑)
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